政府は実現したい政策があるから、助成金を支給しています。では、その実現したい政策とはなんでしょうか。実現したい政策はその時代により変わります。60歳までの定年と雇用が当たり前だった時代は、65歳迄働いてほしいと「高年齢者雇用安定法」の法改正を行い、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の定めの廃止の選択をする高年齢雇用確保措置を企業に義務化しました。その時は、政策を促進するために助成金を設けました。目的が達成できた今はこの助成金はありません。
助成金は法令施行の前に政策をソフトランディング(軟着地)させるために使われるものが多いです。例えば、2020年4月1日より労働時間の法的上限が制度化されました。労使は時間外労働に対し、原則、1ヶ月45時間、1年360時間以内で36協定を締結しなければなりません。しかし原則には例外がつきもので、2024年3月31日までは施行を猶予する業種があります。建設、自動車運転の業務、医師については猶予業務になっています。
いくら労働時間の法的上限の猶予を設けるといっても、2024年4月1日になったら、1か月100時間の時間外残業をさせていた企業が、いきなり1ヶ月45時間になるわけがありません。そこで、労働時間の短縮に取り組む中小企業主を応援し先例をつくるために「働き方改革推進助成金」の労働時間適正推進コースなどで助成金を支給しています。この場合、1企業の助成金の上限は250万円です。ちなみに、この助成金コースも来年には労働時間の上限規制が義務化されるので、今年度限りかと思います。
現在の助成金は政府の「働き方改革」を実現させるためのものが非常に多いです。例えば以下のような政策に助成金はついています。(左が「働き方改革」政策、右が対応する助成金)
1、同一労働、同一賃金など非正規雇用の処遇改善・・・キャリアアップ助成金
2、賃金引き上げと労働生産性向上・・・業務改善助成金
3、罰則付き時間外労働の上限規制導入など長時間労働の是正・・・働き方改革推進支援助成金
4、柔軟な働き方がしやすい環境整備・・・キャリアアップ助成金、人材確保等支援助成金・テレワークコース
5、女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備・・トライアル雇用助成金、人材確保等支援助成金
6、病気の治療と仕事の両立・・・旧障害者雇用安定助成金(現トライアル雇用助成金)
7、子育て介護等と仕事の両立、障害者の就労・・・両立支援助成金
8、雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職、再就職支援・・・労働移動支援助成金、中途採用等支援助成金
9、誰でもチャンスのある教育環境の促進・・・人材開発支援助成金
10、高齢者の就業促進・・65歳超雇用促進助成金、特定求職者雇用開発助成金・特定就職困難者コース
11、外国人材の受け入れ・・・人材確保等支援助成金・外国人労働者就業環境整備コース
これ以外にも、雇用維持のための雇用調整助成金などはありますが、ほぼ政策に沿った助成金メニューになっています。かつて、民主党が政権を取った時に「事業仕分け」で助成金も廃止を検討もされたそうですが、強い反対で残ったそうです。それだけ行政にとっては、政策を着地させるための重要な施策だといえます。つまり、助成金を申請するということは政府の政策に協力しているということになります。躊躇したり、後ろめたさを感じたりする必要はまったくありません。