働き方改革の「5、女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備」の若者雇用促進政策の背景と助成金の関係について話をします。
コロナ禍が収まってきて、2023年3月卒業予定の大学生・大学院性の大卒求人倍率は1.58倍と新規学卒者の就職状況は回復基調にあります。しかし、新規学卒就職者の離職状況をみると、就職後3年以内の離職率は、大学3割、高校4割、中学6割となっています。一方、いわゆる就職氷河期に学校を卒業したかつて若者だった方の中には、正社員になれず、非正規で働き、そのまま年長フリーターになった人が存在します。
2015年に、若者の適切な職業選択の支援、職業能力開発・向上などを定めた「若者雇用促進法」が制定されました。同法では、事業者の責務として、労働条件の明示の遵守、採用内定取り消し防止、新規学卒者への雇用情報の提供、新卒者採用において既卒者の応募を認めること、職場定着促進などを定めています。
働き方改革実行計画で、「若者雇用指針」が改正され、事業者はこれらについて積極的に検討すべきことになりました。若者の採用・育成に積極的で、雇用管理の状況などが優秀な中小企業は厚生労働大臣の「ユースエール認定」を受けることができます。認定企業は、ユースエールマークを活用できます。また、「わかものハローワーク」や「新卒応援ハローワーク」などで企業のPRやイメージアップ、の日本政策金融公庫の低金利融資や公共調達の加算評価があります。
若者特有の助成金では、①トライアル雇用助成金の若年・女性建設労働者トライアルコース(助成額は最大12万円/1人)、②人材確保等支援助成金・若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業(建設分野)コース(助成率は対象経費の9/20~2/3)、があります。
実は、助成金は建設分野の事業主を対象とするものが多く6コースくらいあります。建設分野の助成金は、どれも人材不足解消のためのもので、若者雇用で特に促進させたいということではありません。若者雇用で活用される助成金は、以前お話ししたキャリアアップ助成金の正社員コース、賃金規程共通化コースや人材開発支援助成金などが適していると思います。
また若者が対象ではありませんが、かつて若者だった就職氷河期世代の救済のために、特定求職者雇用開発助成金・就職氷河期世代安定雇用実現コースがつくられています。採用される方が昭和43年4月2日から昭和63年4月1日までに生まれた非正規雇用労働者(つまり、令和5年現在33歳~53歳)が対象です。助成額は最大60万円/1人です。
この助成金の対象者は、同助成金の成長分野人材確保育成コースにも入っていて、デジタル・グリーン分野の業務従事者などの「成長分野の業務」に従事させ、雇用管理改善や職業能力開発をした場合は、最大90万円が支給されます。(いままでフリーターをやっていた33~53歳の中年に差し掛かろうという人が、未経験者なのに「成長分野」のプログラマー、システムエンジニアなどの仕事に就くということ自体が少し難しいように思えますが・・・。)
若者雇用促進で気を付けるのは、若年者の雇用に際しては、労働条件の明示の遵守、採用内定取り消し防止、新規学卒者への雇用情報の提供、新卒者採用において既卒者の応募を認めること、職場定着促進が事業者の責務としてあるということです。それさえ忘れなければ、法令違反にならず、若い人が長く会社で活躍する基礎をつくれます。