働き方改革の「11、外国人材の受け入れ」の政策の背景と助成金の関係について話をします。
日本で働く外国人労働者は近年増加し、2022年10月末には182万人で過去最多となりました。産業別では製造業が48万人と最も多く、特に食品製造業の割合が高くなっています。卸売・小売業なども外国人が多い分野です。外国人雇用状況では、国別にはベトナム、中国、フィリピンの順です。
日本で働ける在留資格は、大きく5つのカテゴリーがあります。「身分に基づく在留資格」が最も多く全体の3割強、次いで就労目的の「専門・技術分野」が2割強、「技能実習」が2割、「留学生」などの資格外活動が2割、その他EPA(経済連携協定)による看護師・介護福祉士候補、ワーキングホリデーなどの「特定活動」があります。2021年4月から、不足する人材の確保を図る必要がある分野において、一定の技術と日本語能力のある外国人に「特定技能」という在留資格が創設されました。
一方、1993年に創設された「技能実習」には、日本で学んだスキルを出身国の経済発展に生かしてもらうという理念がありました。実際は多く実習生が人手不足の穴埋めとして雇用され、理念と現実のズレが指摘されていました。中でも批判が多いのは、技術習得のためとして転職を原則禁止にした点です。実習生は、賃金や処遇に不満があっても働き続けるか、職場から逃げ出すしか選択肢はありませんでした。
転職制度が人権侵害の温床と批判されたことを受け、政府の有識者会議は2023年4月、技能実習を廃止して、新たな制度を検討するよう求めました。転職制度は緩和する方向に動いています。新制度が実現すれば技能実習に否定的なイメージを抱いていた企業も外国人材を積極的に活用するかもしれません。
外国人労働者にも、日本人同様に、すべての労働関連法規が適用され、社会・労働保険にも加入しなければなりません。特に、労働基準法は、国籍によって、労働条件について差別的取り扱いをしてはならないと規定しており、外国人だからといって賃金を低くすることなどは許されません。
一方、日本語が話せない、日本の生活に慣れていないなど、事業者の支援が必要な場合も多いため、職場におけるコミュニケーションは、円滑な仕事のみならず安全確保のためにも重要です。このため労働施策総合推進法において、外国人労働者を雇用した場合には外国人雇用状況届出をハローワークに提出することを義務付け、外国人労働者の適切な雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針を策定しています。
外国人雇用に関する助成金では、人材確保等支援助成金の外国人労働者就労環境整備助成コースがあります。外国人労働者は日本の労働法制や雇用慣行などに関する知識の不足や言語の違いなどから、労働条件・解雇などに関するトラブルが生じやすい傾向にあります。この助成金は、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主に対して、その経費の一部を助成するものです。
支給対象経費は、通訳費、翻訳機器導入費、就業規則の多言語化などの翻訳料、弁護士・社会保険労務士への委託料、社内標識の設置・改修費があり、外国人・日本人の離職率の目標を達成する必要があります。支給額は対象経費の1/2、最大72万円です。
国際協力機構(JICA)による試算では、政府が掲げる経済成長の目標達成には、2030年に419万人(現在の2.3倍)の外国人労働者を必要としています。助成金を使って、就業規則を外国人従業員の母国語で作成するなどコミュニケーションを充実させて、外国人が長く日本にとどまって活躍できる環境をつくらないといけないですね。