働き方改革の「3、罰則付き時間外労働の上限規制導入など長時間労働の是正」の労働時間短縮政策の背景、助成金の関係について話をします。
働き方改革関連法(改正労働基準法)には、義務として、2019年より次の3点が改正されました。①時間外労働の上限規制、②月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ、③年次有給休暇の確実な取得です。①の時間外労働の上限規制について特に重要なので次に説明します。
日本の年間総労働時間は1,713時間ですが、アメリカの1,783時間よりは短いものの、ヨーロッパ諸国と比べるとかなり長く、週49時間以上の人は、日本は約20%、アメリカ16%、イギリス12%、フランス10%、ドイツ9%なのだそうです。日本人は働きすぎといわれるゆえんです。
年間総労働時間は減少傾向にあり、近年では1,700時間の水準になっていますが、正社員については2,000時間前後で推移しています。また週の労働時間が60時間以上の労働者の割合も、30代男性・40代男性で10%以上になっています。週60時間ということは、週5日勤務だとしたら、40時間が法定基準ですから、20時間の時間外労働、毎日平均4時間の残業をしている人が1割いるということです。
日本は総実労働時間が長く、長時間労働する人の割合も高いといえます。長時間労働の是正は切迫した問題で、この問題は「過労死」や労働災害を引き起こします。「過労死」の労災認定は毎年約200件です。脳・心疾患に係る労災支給決定件数は2002年度以降、200件~300件台、精神障害に係る労災は2012年度以降400件台で増え続けています。
改正労働基準法は、法定労働時間1日8時間、1週40時間と定めています。それを超えて働かせる場合は、労使で36協定を締結し、法定労働時間を超えた労働時間の上限を定めることとされました。限度基準告示では、1か月45時間、3ヶ月120時間、1年360時間ですが、臨時的な必要がある場合は特別条項付きの協定を締結し、年間上限720時間、1か月100時間未満、2~6か月平均80時間以下となるようにすることとなりました。
これに関連した助成金では、「働き方改革推進助成金」があります。各コースについては次の4つがあります。①労働時間短縮・年休促進コース、②勤務間インターバル導入コース、③団体推進コース、④労働時間適正管理コース。
①労働時間短縮・年休促進コースだけ話をすると、このコースは生産性を向上させ、時間外労働の削減、年次有給休暇や特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組む中小企業を支援するものです。既に、労働時間の上限規制などは施行されて義務化されていますが、建設・運送等・医師については猶予業種として2024年3月まで施行が猶予されています。この業種を中心に労働時時間短縮を事前に図ろうとしています。
助成対象は、労働能率の増進に役立つ設備・機械の導入・更新、研修費用など9つの項目から選び、成果目標を達成したら支給されます。成果目標は、労働時間を縮減し月60時間・80時間以下の上限を設けて労基署に届け出ること、年次有給休暇の計画的付与など3項目の1つを選択し達成させ賃金の引上げを3%以上行うことです。例えば建設業の場合、助成金額最大は830万円です。「働き方改革推進助成金」では、生産性を向上させる、労働時間を減らす、年次有給休暇を取らせる、賃金の引上げを図るといった4つの目的を同時に果たそうとしています。
労働時間を減らすのは厳しいかもしれませんが、猶予期間が終われば、労働時間の上限を超えて働かせることはできなくなります。それならば、助成金の支給をしてもらい、今のうちに適正時間労働の準備をしてはどうでしょうか?