働き方改革の「8、雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職、再就職支援」の労働移動促進政策について背景と助成金の関係について話をします。まずは、以下の「令和3年度版厚生労働白書」をご一読ください。
「人生100年時代に向けて、高齢者、女性、不安定就労者などを含めたさまざまな立場の方が、個々の事情に応じて柔軟な働き方を選択できるよう、労働移動の円滑化を図るため、『年齢にかかわりのない転職・再就職者の受け入れ促進のための指針』の策定や、『中途採用・経験者採用協議会』の開催を通じた中途採用に積極的な企業の好事例の共有、転職・再就職の為の施策を進めている。」
2020年度の転職者実態調査によると、事業所調査では、一般労働者(フルタイム)がいる事業所のうち、転職者がいる事業所の割合は3人に1人です。採用者の側では、管理的な仕事や専門的・技術的な仕事は、経験を活かし即戦力になるからという理由が最も高い様です。転職する労働者側では、自己都合が8割で、その理由は労働条件(賃金以外)が良くなかったからが3割で、転職先を選んだ理由も仕事の内容に満足がいく、労働条件(賃金以外)が良いからという回答が多く、転職先の満足度は4割だそうです。
一方、新規学卒就職者の離職状況の調査では、大学卒業者の就職後3年以内の離職率が3割となっています。労働力のミスマッチが原因で、転職で新しい職場を求める人が多いのは、私のような会同じ会社に41年に勤務していたものにとっては驚きです。時代は大きく変わっているんですね。
この働き改革の政策は具体的には、①転職者の受け入れ企業支援や転職者採用の拡大のための指針策定、②転職・再就職の拡大に向けた職業能力・職場情報の見える化です。ほとんど施策は助成金ですが、働き改革のベースとなる法律「労働施策総合推進法」では、②の「見える化」について、大企業に対し、中途採用比率の公開を求めています。おおむね1年に1回以上、直近の3事業年度についてインターネットなどで公表することが義務付けられています。
助成金として代表的なものは、労働移動支援助成金・早期雇入れ支援コース、中途採用等支援助成金・中途採用拡大コースの2つです。
労働移動支援助成金・早期雇入れ支援コースは事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者の再就職援助のための措置を講じる事業主に対して助成するものであり、当該労働者の早期再就職を目的としています。再就職援助計画などの対象者を離職後3ヶ月以内に期間の定めのない労働者(無期雇用)として雇入れ、継続して雇用することが確実な事業者に対して助成されます。再就職支援は最大上限1人60万円です。早期雇入れも通常助成は1人30万円ですが1年度1事業所500人分が上限となっています。(訓練の賃金助成もあります。)
中途採用等支援助成金・中途採用拡大コースは転職・再就職者の支援のため、中途採用者の雇用制度を整備した上で中途採用率の拡大を行う、45歳以上の者を初採用するなどした企業に支給されます。中途採用拡大に伴う助成金は最大50万円です。日航からトヨタへの3,500人の出向は雇用維持で有名になりました。企業が倒産廃業などで事業をたたむ場合には、知り合いの事業主は優秀な社員を獲得するために、こういった制度も活用したいですね。政府は、衰退産業から成長産業への速やかな労働移動=生産性の向上を考えていると思います。