働き方改革の「6、病気の治療と仕事の両立」の両立支援政策と背景、助成金の関係について話をします。まずは、以下の「2021年度版厚生労働白書」をご一読ください。

「病気の治療を行いながら仕事をしている労働者は、労働人口の3人に1人を占める。また、労働安全衛生法に基づく一般健康診断における有所見率は年々増加を続けている。労働力の高齢化が進む中で、職場において、病気を抱えた労働者の治療と仕事の両立への対応が必要になる場面は更に増えることが予想される。

このため、事業者が、がん、脳卒中などの疾病を抱える労働者に対して、適切な就業上の措置や治療に対する配慮を行い、労働者が治療と仕事を両立することができるようにするための取組などをまとめた『事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン』 2016年2月に策定(2019年3月改定)し、その普及や企業に対する各種支援を行っている。

『働き方改革実行計画』に基づき、主治医、会社・産業医と、患者に寄り添う両立支援コーディネーターによる治療と仕事の両立に向けたトライアングル型のサポート体制の構築などを推進することとしており、両立支援コーディネーターの育成・配置や、主治医、会社・産業医が効果的に連携するためのマニュアルなどの作成・普及に取り組んでいる。」

ワークライフバランスにおける「両立支援制度」の為の休業制度は、産前産後休業・育児休業・介護休業など、法律で制定されていますが、病気休業は法制化されていません。労働者が病気になったときに、労働者=患者に対して治療のために医療情報と長期休暇など会社の理解が必要になります。しかしながら、医療側は仕事のことが分からない、職場=会社は病気のことは分からない、労働者=患者は病気・生活・仕事と手続や制度のことは良くわかりません。また、産業医がいない中小企業では相談もできません。

政府は、こういったことを解消するために、橋渡しの役割を果たす両立支援コーディネーターを育成しています。目的は離職率の低下ですが、企業にとっては反応が鈍い、あまり積極的に関与していないことが多いように思われます。

何故かというと、助成金の対応がガイドラインを作った2016年と変わってきているからです。助成金には、この政策に対する助成金として、障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース・障害者職場適応援助コース)がありました。雇用する障害者の職場定着のための措置を行う事業主や、職場適応援助者による障害者の職場適応の援助を行う事業主に対して経費や賃金の一部を助成する制度です。しかし、202年4月から障害者雇用安定助成金の両コースは、キャリアアップ助成金に移管されました。従来あった4つの促進対策も移管に伴い廃止になりました。

助成金は政策と社会を映す鏡のようなものです。社会の反応が高ければ申請者が増え継続して予算を付けられる一方、社会の反応が少なければ申請者が少なく廃止または統合になります。病気の治療を行いながら仕事をしている労働者、例えば、がんにかかった方を障害者と呼ぶのは抵抗がありますが、キャリアアップ助成金に移管されたことも利用者を遠ざけている理由かもしれません。この助成金も、事業主からの申請が少なく統廃合が行われたものと思われます。

優秀な人材を会社に引き留めておくことについては大事なことです。まずは、休業規程を作成し、助成金を受給して回復を待ちましょう。従業員も会社に感謝するはずです。