働き方改革の「7、子育て介護等と仕事の両立、障害者の就労」の介護と仕事の両立政策についての背景、助成金の関係の話をします。

介護をしている人で職業を持っている人は、男性で約7割、女性で約5割です。男性が55歳~59歳で最も多いのに対して、女性は40歳~49歳が最も多く、働き盛りの女性が介護に時間と労力を割いているのがわかります。

また、介護・看護を理由に離職した人は、年間10万人で、女性が8割を占めています。介護休業制度に関する規定を整備している企業は約3分の2ありますが、介護をしている労働者のうち、介護休業を利用した人は3%、介護休暇を利用した人は2%です。

一方、介護保険事業の状況を見ると、2021年2月末現在で要介護・要支援認定者数(65歳以上のみ)は666万人です。過去と比較すると、2000年が218万人なので20年間で3倍に増え、2013年の564万人から8年間で100万人増えています。介護施設が充実してきたとはいえ、超高齢社会が続くとますます介護が必要な方が増え、会社で働いている従業員の家族に負担がかかってきます。

育児介護休業法は、介護中の労働者に対して休業、休暇、時間外労働制限、所定労働時間短縮、などの措置を講ずることを、事業者に義務付けていますが、政府のこの働き方改革についての施策はそれを更に定着させるためのものです。施策は、介護と仕事の両立支援策の充実・活用促進(介護等への参加促進)です。

政府は、事業主が労働者の介護離職を防止するため、「介護支援プラン」の普及や政策支援を行っていますが、その他にも介護を行う労働者が働きやすい雇用環境の整備を行う事業主を支援するために、両立支援助成金の介護離職防止支援コース助成金を支給しています。

介護離職防止コースは、「介護支援プラン」を作成し、プランに基づき労働者の円滑な介護休業の取得・復帰に取組んだ中小企業事業主、または介護の為の柔軟な就労形態の制度を導入し、利用者が生じた事業主に支給されます。その内容は①介護休業、②介護両立支援制度の2つです。

介護休業は対象労働者が介護休業を5日以上取得し、復帰した場合は、取得時30万円復帰時30万円の助成金が1年度5人まで支給されます。また介護休業の間に業務代替えで人を雇うなどした場合は、新規雇用20万円、手当支給等で5万円の加算があります。

介護両立支援制度は、介護のための柔軟な就労形態の制度を導入し、合計20日以上利用した場合に支給されます。これは介護のための在宅勤務、法を上回る介護休暇、介護フレックスタイム制、介護サービス費用の補助などです。この制度は助成金30万円、1年度5人まで支給されます(個別周知・環境整備の加算15万円まで)。

しかしながら、介護をしている労働者のうち、介護休業を利用した人は3%、介護休暇を利用した人は2%であると同様に、この助成金を支給申請している事業主は多くはないようです。本人が介護をしていることを会社に言わないのもマイナーなイメージがあるからでしょうか。優秀な社員を介護離職で失わないためには、事業主の働きかけが大切です。介護規程をつくって、従業員に便宜をはかり、事業主は助成金をもらうことも検討してはどうでしょうか。